おすすめBL『PROMISING』(英田サキ)感想

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BLは基本的に”作家買い”で、「間違いない」「基本的にハズレない」と知っている作家さんの作品を追っていくことが多いスタイルなのですが、とても良質な意味で裏切られたのが、こちらの作品。
英田サキさんの『PROMISING』です。

英田サキさん、もとから好きな作家さんです。作家買いする、信頼している作家さんのひとり。
その英田サキさんに、なにをどう裏切られたかといえば
これまでの代表的な持ち味が全部、封印されていたということです。
で、あるにも関わらず最高におもしろく
今日とりあげている『PROMISING』は、シリーズの中でも一番好きな作品になりました。

 

『PROMISING』の作品概要……『DEADLOCK』シリーズの番外にして本編の長編作品

『PROMISING』は、完結済み『DEADLOCK』シリーズの最新長編作です。(2019年3月現在)

麻薬捜査官の主人公・ユウトは、同僚の殺人という冤罪で捕まってしまいます。そこから脱出するために出された交換条件は、監獄内に潜伏中というテロリストを見つけ出すこと。
同房になったのは、金髪碧眼・男も惚れ惚れとするような外見を持つ、クールな男・ディック。
2人の出会いは、果たして……?!

というのが、シリーズ『DEADLOCK』のあらすじです。

なおDEADLOCKとは、雑に訳すと「どん詰まり」みたいな意味です。
2つ(以上)の動く物体が、どちらも相手の処理終了を待たねば先に進めない状態になってしまって、結局どちらも動けなくなってしまう……という状態。

大変よくできたタイトルだなぁと思います。
せっかくなので、ちょっと画像もみてください。

『BANANA FISH』愛好者には、ちょっとこう、これだけでグッとくる何かを、感じたりしませんか……?

大正解です。

最悪の環境の脱獄から始まり、銃アクション、陰謀、策略、愛と復讐と……という、てんこ盛りのバリバリにハードボイルドな作品です。

で、今回紹介している『PROMISING』は、『DEADLOCK』シリーズの作中人物の一人を主人公にしたスピンオフ作品『SIMPLEX』で主人公だった2人を、
あらためて”本編の主人公”たちのうちの1組、という位置付けにして書かれた作品です。

なので、この作品を読むにあたっては、基本的に『DEADLOCK』と『SIMPLEX』を読んでからの方が楽しめると思います。

が、読んでなくても一応は大丈夫、なようには書かれていると思います。

シリーズ追うのは面倒くさい、という方は、『PROMISING』から読んでもいいのかな、と思います。
(ただしこれ読んだら、結局シリーズ全部追いたくなるんじゃないかな……^^)

このシリーズ、どの表紙も、どこか「海外ドラマっぽい」「洋画っぽい」感じがあると思うのですが、実は中の文章も、少し「海外ものを翻訳した作品っぽさ」があります。
セリフの言い回しをそうすることで、雰囲気を出しているんだと思うのですけど。

それが、とてもあっています。
海外作品の翻訳ものだと、翻訳が合わないと「無理、もう読めないわ」って投げ出したくなることも私は少なくないのですが
英田サキさん、日頃は日本語で日本語の作品を書いている方なので、
「それっぽい」のに、「翻訳が合わなかった」というミスマッチには陥らない仕様です。
大変ありがたいです。ありがとうございます。

「叙述もテンポもシンプルでクセがなく、簡潔。」というのをベースにして、そこから個性がにじみ出る……みたいな文体が好きなので、「あ、そういうの好き、好き!」という人には、特におすすめできる作品かもしれません。

海外小説好きな人にもおすすめですよ!

 

『PROMISING』あらすじ

犯罪心理学者・ロブの恋人であり、要人警護の仕事を経て民間のボディガード会社に勤務しているヨシュアは、とあるきっかけから映画に出演することに。
その思いもよらない映画出演をきっかけに、ヨシュアは自分の人生を自分で取り戻し、生きるきっかけをつかみかける。
「年上のたよれる恋人」であるロブは、そんなヨシュアの様子に喜びつつ、彼もまた自分の中にある葛藤に目を向け始めるようになる。そんな中ロブは、旧友の息子が「ゲイであることを幼馴染みに知られてしまったことがきっかけで悩んでいる」という話を聞き、旅行がてら友人宅へと赴くこととなる。
ロブは「旅行には一人で行く」と決めており、ヨシュアがともに行くことを許さない。
その頑なな態度に、生活にすれ違いを生じ始めていた2人の関係性にも変化が訪れ……。

と、いう話です。

『PROMISING』感想

上述のあらすじを見てもらえるとわかるように、この作品、めっっっちゃくちゃ地味なんです。
「仕事がきっかけで生活がすれ違い始め、恋人たちは、そのすれ違いと自分たちの関係性、そして自分の姿を見つめ直すことになる。」
っていう、ほんの一文で書けてしまうような。

DEADLOCKシリーズはこれまで、明確に「派手なアクションや殺人事件の解決などのサスペンスで魅せる」タイプの作品でした。
その派手さに負けないだけの、堅実でしっかりしたストーリーがあるからこそおもしろいわけですが、その派手さがストーリーの堅実さをまた引き立たせ、お互いを補いあって魅力を引き出しあっているような。

それが今回、銃撃もなければ人も死なないんです。
復讐もテロも、殺人事件すら起きない。
びっくり!

しかし、しかし
この作品は、きっとこれでいいんです。

これまでにそうしたものを、いくつもいくつも乗り越えてきて、
その先に訪れた「日常」だからこそ、ヨシュアは苦しむし逃げられないし、ロブもまた目をそらすことができなくなった。
そういうことです。

あらためて書いてみると、圧巻ですね。

ただ、書かれているその「日常」に含まれるものは、決して軽くはないです。

切り口もめちゃくちゃ鋭いんですよ。
英田サキさんは、「子ども」という存在への視点と倫理観に一貫性があって、絶対にブレない作家さんです。
その点、本当に信頼できる。

自分自身ではどうにもできない、努力の及ばない過去のこと。
カミングアウトの話があり、アウティングへの視点があり、
クソのように未熟な若い日の自分がいて、
失い、もう二度と取り戻せない家族がいて、
その上に今があり、
その「今」は、放っておいては維持すらできないということ。
たえず新陳代謝し、変わって、都度お互いに向き合ってケアをして、という不断の努力が必要で、
その日常は、ときに脱獄よりも銃撃戦よりもドラマチックであるということ。

日常はドラマに満ちているという話ですね。

……どうりで私好みだと思ったよね!!!!!!

これまでに積もり積もってきたものがついに崩れたら、満開の花だった! みたいな読後感です*^^*

英田サキさんの話には、たびたび「間に合わなかった」人たちが出てきます。
彼・彼女らはどうにもならなかった、その一方で、どうにか間に合ってほしいという祈りがあります。
どうにか間に合っても、それは完全な救いではなく、新しい迷いや苦しみや悲しみのはじまりでしかない、ということもあります。
それでも花開く、という、この強さ。

きっとひとりでも立つ、という背筋の伸びるような強さがあって、一緒に手をとって歩ける人がいる、という甘ったるくない甘えがあって、最高でした。

超傑作だと思うので、このシリーズが好きな人、知っている人は、ぜひ読んで欲しいです。
知らない人も、ぜひ!

 

<<今日のtips>>

『PROMISING』(英田サキ)は、シリーズで一番の地味作にして、最高傑作。

人生は何歳になってもまたスタートできると知っている人、信じている人、信じたい人には特におすすめ。
また、あくまでフィクションとしてですが、「うちの子はゲイらしい」「ゲイバレしたっぽい」という状況と向き合う家族のポジティブな一例としても悪くなさそう。

 

以上です!

お読みいただき、ありがとうございました*^^*

 

書いている人;やまママ
yamamamatips

川越の近所に住むフリーランス&書店員。若い人たちに性教育などする仕事をしていました。
通勤電車スキーな卵アレルギー持ち幼児を育てつつ、ゆるワーキングマザー生活を満喫中。

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