おすすめBL『薔薇色じゃない』(凪良ゆう)感想

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めちゃくちゃ地味なんだけど、とても先鋭化されたBL『薔薇色じゃない』(凪良ゆう)を読んだので、その感想です。
「出汁のしっかり沁みた風呂吹き大根、超上質な辛子がツンと鼻にくる(しかしそれがよい)」みたいなBLです。
辛子の切れ味がたいそうよくて涙が出ます。

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『薔薇色じゃない』あらすじと概要

あらすじ

これ以上なくスムーズに惹かれ合い、恋に落ち、恋人になった主人公2人。しかし大学卒業後、一般企業につとめはじめた攻とフードスタイリストを目指す受との生活・価値観は少しずつすれ違い、小さなすれ違いをきっかけに別れることになる。
やがて再会し、友人としての関係が続いていくが……。

と、いう上述のあらすじを見ていただければわかるとおり、大変地味な作品です。
ただしとても滋味深い。
地味だけど滋味深いと作中で受けの作る料理について表現されているのですが、その通りの作品だと思います。

2人が付き合い始めた学生時代から、15年もの間の生活・日々を、2人の視点で一緒に体験していく物語です。
脱獄もしないし銃撃戦もない。
家族との死別はただ誰にでも起こる悲劇として描かれ、運命を運んでいく分岐は、常に日常生活の中にある。

作者の凪良ゆうさんはもともと、そういう作品に強みがあるような気がします。
ストーリーやあらすじで考えたら、起伏の少ない「えっ、それだけ?」みたいな物語を、こんなにも豊かに描くのか。という。

「円満とは言えない別れかたをした元恋人と再会する」という、BLに限らずごくありふれたシーンでも切り刻まれるような痛みを感じるし、ほっとする描写では本当にこちらの肩の力が抜けて、お風呂にでも浸かったときのような心地になれる。
そうやってひとつひとつを感じながらたどる2人の15年間は、とても豊かなものでした。

また、凪良さんは「出てくる食べ物がみんなおいしそう」でかねてからわりと有名な作家さんだと思うのですが、今作では「出てくる食べ物をみんな作りたくなる」という要素も加わったように感じました。
おいしそうなだけでも貴重なのですが、作りたい、までいくととても稀有です。
そういう点も楽しめながら読めるといいかもしれません……・v・

カップリング

一般企業につとめる攻めと、フードスタイリストの受け。
攻めは「かわいい」亭主関白で、受けは健気”ではない”けれど素直でがんばりやさんのいい子です。

性描写

ほとんどありません。
皆無ではないですが、性描写に比重はほとんど置かれていない作品です。

 

『薔薇色じゃない』の素晴らしいポイント

同性同士の「結婚」「家族になる」ということ

「結婚なんて紙1枚出すか出さないかの違いでしかなくて、行政に認められようがそうでなかろうが、好き合う2人には大きな問題ではない」なんてふわついたセリフは、たしかに、恋をしている段階では間違ってはいないのだと思います。
でも一緒に生活をしていくとなると、それだけではいられないんですよね。

病気になったら、入院したら、手術が必要になったら。
死別したら。
2人で一緒に過ごした時間の詰まったそれらが、残された側の手元になにも残らなくなってしまうとしたら。

そういう現実的なものから逃げずに作られた作品でした。

東京都の渋谷区と世田谷区とで、パートナーシップ条例が施行されたのが、2015年11月。
この作品『薔薇色じゃない』が世に出たのが、2016年6月。
条例の施行から約半年です。
しっかり意識された作品だったのだなと思います。

凪良さんはもともと、たぶん「家族」というものの定義を考えたり問い直したり、と言ったことに強みがあるというか
頭みっつぶんくらい飛び抜けて描写のうまい作家さんだと思います。

『ここで待ってる』という作品では、血の繋がり方(繋がらなさ)に特徴があるのですが、子どもが存在するBLが書かれました。

(画像クリックでAmazonにとびます)(こちらも、リンク先レビューも参考になると思います……!)

大切に育むべき子どもがいる、というとき、ゲイのカップルはただ「社会に受け入れられるべき」存在というだけではなく、大人として子どもの育ちに責任を持つべき主体になります。

子どもをどういう環境におくことになるのか、それが子どもにどういう影響を与えるのか、ということに対しての大人としての責任について、
そういう責任がある、ということについて逃げをうつことなく書かれた作品でした。
こちらもついでにおすすめです!

「男同士だからこそ」と「性別なんか関係ない、みんな人間」との間

BLってよく「性別を超えた」て言われるんですよね。「性別なんて関係ない」とか。
でも、性別を超えているのは異性愛者の方だし
「性別なんて関係ない」のではなく、同性に性愛が向くから同性愛なのにそれを無視するのは事実と違うし(性別なんて関係ない、というセクシュアリティもあるし、それはもちろんなにもいいも悪いもないのでうsが)
同性に対して向くことを、わざわざ取り沙汰して不遇においている社会の中で「性別なんて関係ない」って言っちゃうのは、今ある問題をなかったこと扱いするような言説になり得るので、私は「ありえない」言い方だと思ってるんですね。

で、こういうセクシュアリティや性差による不均衡って、ジェンダーという形で日々実感している(特に女性の)人は少なくないわけです。

そんな中で
「男同士だからこそ」という話と「性別は関係ない、人間だからこそ」という話との片方に振るのではなく、両方ともを不誠実にならない形で描けるというのは、これはけっこうすごいことなのでは……? と思うのです。

この話は、あくまでエンタメ作品で、セクシュアリティやジェンダー教育のために作られたものではないので
その点で言えばもちろん不足がないわけではないのですが
それにしても、その両方ともをよく描いたな……というのが、私の抱いた印象でした。

両方に対して誠実で、両方を描いてる。
ジェンダーは社会の構造の話である、という点と、一方でそれを個々人の営みとして見てみると……、というバランスも両立している。
すごいですね。

そういう点を気にする人であっても、少なくとも及第点はとれるんじゃないかな……と思いました。
まぁこのへんはその人の感覚次第ですし、私は作者さんのファンなのでちょっと判定甘いかもしれませんが。

こういう点の甘さって、気になっちゃうと読めなくなっちゃう作品ってけっこうあるんですけど、私は『薔薇色じゃない』に関しては「大丈夫+よかった!」という感想です。

読んだみなさんもそんな感じだといいな……。

 

『薔薇色じゃない』読後の感想をできるだけ端的にいうと

「すっ……………………おおおおおお、すごい、ありがとう……………………」
「15年の…………15年の営み…………」

という感じでした。

恋愛において「好きの気持ちだけで決められない」というのは、気持ちの不足や優先順位の低さではなくて、むしろ逆の機序からくるものだったりもするのだなぁ。というようなことを思いました。
それでもそこを超えてくる、というのが、日常の持つ力なのだな。とか。

大きな事件はないから、そういう刺激を求める時には向かないかもしれないけれど、じっくり噛みしめられる作品を探している人にはおすすめです。

気になった方は、ぜひ!

 

<<今日のtips>>

『薔薇色じゃない』(凪良ゆう)は、噛めば噛むほど味がでる、大変に滋味深い作品。
「日常の生活ってすごい!」を腹の底から感じられるBLを読みたい人、「家族」の条件を考えたい人にはおすすめ!

以上、お読みいただいてありがとうございました*^^*

 

 

書いている人;やまママ
yamamamatips

川越の近所に住むフリーランス&書店員。若い人たちに性教育などする仕事をしていました。
通勤電車スキーな卵アレルギー持ち幼児を育てつつ、ゆるワーキングマザー生活を満喫中。

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